十五夜の夜空に浮かぶ月をイメージした配色をまとめてみました。
9月といえば「お月見」。正式には「十五夜」や「中秋の名月」と呼ばれ、旧暦8月15日(現代の暦では9月中旬頃)に月を愛でる日本の風習です。
「お月見」文化は、平安時代に中国から伝わり、江戸時代には庶民の間にも広まりました。
縁側にすすきを飾り、月見団子をお供えしながら満月を静かに眺める——そんな秋の夜の情景が、日本人の美意識の中に深く根付いています。
今回の配色は、そのお月見の夜をそのまま3色で表現したものです。
深い夜空の青、黄金色に輝く満月、そして月が昇る前に空がやわらかく白んでいく、あの静かな光——この3つの色の組み合わせです。
| RGB | CMYK | HEX | ||||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| R | G | B | C | M | Y | K | sRGB | |
| 紺色 | 30 | 54 | 102 | 75% | 50% | 0% | 55% | #1E3666 |
| 黄蘗(きはだ)色 | 253 | 238 | 84 | 5% | 0% | 65% | 0% | #FDEE54 |
| 月白色 | 234 | 244 | 252 | 10% | 5% | 0% | 5% | #EAF4FC |
紺色(こんいろ)
紺色は、藍染めの中でも最も深く染め上げた、重みのある濃い青色です。
染料となるタデアイ(蓼藍)はちょうど9月が二番刈りの収穫期を迎える植物。その葉を何度も染め液に浸しては乾かす工程を繰り返すことで、この奥深い紺色が生まれます。江戸時代には藍染めを生業とする染物屋が「紺屋(こんや)」と呼ばれ、庶民の暮らしに欠かせない色でした。
お月見の夜空は、夕暮れの名残もなく静まり返った、底のない青黒。紺色はその夜の深さを表す色です。この配色では、月と月の光をくっきりと浮かび上がらせる、夜の大きなキャンバスとして機能します。
月白(げっぱく)
月白は、薄い青みをほんのりと含んだ白色です。
月が東の空に昇る少し前、まだ月の姿は見えないのに、空だけがじんわりと明るくなっていく——その不思議な時間の色が月白です。「月代(つきしろ)」という俳句の季語にもなっており、秋全体を通じて使われます。松尾芭蕉も「月代や膝に手を置く宵の宿」と詠んでいて、月を待ちながら静かに膝に手を置いて座っている宵の情景が浮かびます。
月そのものの色ではなく、月を待ちわびる時間が色になった——それが月白です。白でありながら夜の空気をまとった青みが、この色を他の白とは違うものにしています。
この配色では、紺の夜空と黄蘗の月の間で、月明かりが地面をやわらかく照らす光として機能します。
黄蘗色(きはだいろ)
黄蘗色は、ミカン科の落葉高木・キハダ(黄檗)の樹皮を染料として用いた、鮮やかで澄んだ黄色です。
キハダは秋に樹皮を収穫して染料とする植物で、9月の収穫期と直接結びついています。また、月が地平線近くにある時、空気の層を長い距離通り抜けることで青い光が散らばり、黄色やオレンジの波長だけが目に届きます。ミカン科植物ならではの黄橙の色みが、お月見の夜に見上げる月の色と科学的にも重なっているのです。
夜空の紺色の中で、黄蘗色は満月そのものの輝きとして浮かび上がります。
配色として
深い夜空の紺色、満月の黄蘗色、月が昇る前の光の月白。
三色それぞれが、お月見の夜の異なる時間と場所を切り取っています。タデアイの収穫期から生まれた紺色、キハダの秋の染料と月の光の波長が重なる黄蘗色、そして月を待ちわびる時間そのものを色にした月白。日本人が秋の夜に月へ向けてきた感情が、この3色の背景に静かに宿っています。
秋の和テイストのデザイン・9月のビジュアル制作・お月見をテーマにしたブランディングなど、夜の品格と月の温かさを同時に表現したい場面にぜひ活用してみてください。

